コールドチェーンの
カスタマイズ

対象となる温度管理ソリューションに対するニーズの拡大。

市況

今年、世界の製薬業界に関するすべての統計情報の中でも、とりわけ、2つの大きな数字が製薬会社とそのロジスティクスパートナーの注目を集めました。1つは、BRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国)における2016年までの予測される医薬品の売上総額である2480億ドルという数字i、もう1つは、2014年におけるコールドチェーンロジスティクスにおいて世界の製薬会社が費やす総額である80億ドルという数字ですii

なぜこれら2つの数字が注目に値するのでしょうか? これらの数字は、開発研究が拡大すれば、ロジスティクスもまた拡大することを示しています。製品が、より対象を絞った治療に対する需要に対応して進化するにつれ、より対象を絞ったロジスティクスソリューションに対する需要も拡大します。また、これは、臨床試験のサンプルから完成品まで、あらゆる品に対してカスタマイズの必要性があることを意味します。

このような市場のダイナミクスを理解するには、製薬業界に関する一連の数字と製薬メーカーが温度管理ニーズに対応するソリューションをどこで見つけることができるのかをしっかりと調べる必要があります。

新しい温度需要を押し上げる製薬業界のトレンド

画期的新薬の時代は先細りしています。開発と商用化の両方の観点からいうところの新薬は、より対象を絞った治療、第2および第3用途、および希少病に向けたカスタマイズ治療に移行しつつあります。

医薬品は進化を続けており、保存期間が短く厳しい温度要件を必要とする高価値な医薬品活性成分が使われるようになっています。また、人体由来の物質(細胞、血液)を採取し、修正し、加工薬品を患者に投薬することによって開発された医薬品を体温と同じ温度で輸送することへの需要が増えています。このような医薬品の輸送時間は通常、最大で36時間です。また、GDP/GTP規制がサプライチェーン全体を通じて監視付き温度管理を要求している今、ロジスティクスパートナーに対しても、管理室温(CRT)に対する要求が高まっています。このような市場のダイナミクスに照らし合わせると、より包括的な「温度管理」という言葉へのシフトが見られるため、どれもが「コールド」というわけではなくなりつつあります。

パッケージングの革新

機内GPS監視が登場し、空港は医薬品用の低温保管庫を別途提供していますが、製造メーカーはサプライチェーンだけに依存できない状態が続いています。その結果、多様な製品ニーズに対応するため、さまざまな温度範囲に対応するためのパッケージング能力が進化しつつあります。ほぼあらゆるパッケージングメーカーが、取り扱いが容易で、温度管理を要する製品およびサンプルの保管のための真空断熱材(VIP)および相変化材(PCM)ソリューションを開発しています。このことは、凍結および冷却ゲルパックを組み合わせたセミアクティブソリューションから、PCMを採用した純粋な受動的ソリューションへの移行を示しています。さまざまなサービスやソリューションが登場したことは、特定の製品に適切なパッケージングを選択する上で豊富な選択肢が増えたことを意味します。

低温ソリューション

メーカーは、世界中の空港で温度管理された保管庫を提供しているのはわずかであることを認識しなければなりません。空港で低温の倉庫を提供していることは確かですが、このような保管室内の温度は+-0°Cから+13°Cまでといったようにばらつきがあります。それは管理室温(CRT)についても同じで、低すぎるか高すぎるかのどちらかです。現地に関する豊富な知識と接点を有するロジスティクス企業とのパートナーシップ、および当初からの適切なパッケージングの利用があってこそ、温度逸脱という問題を緩和することができます。メーカーは、自社が利用しているサービスプロバイダーが、輸送や保管の際にPCMを変更または補充する能力があるかどうかを自問し、適切なパッケージングの使用によって、サプライチェーン内で最大限の独立性を獲得できることを覚えておかなければなりません。

新しいVIP/PCMテクノロジーが、温度管理された輸送を容易にする一方、メーカーには、自社のニーズに最も適したソリューションを選択する上での知識や自制心が要求されます。それには、PCMのルートおよび適切な条件付け、システムの適切なラベリング、温度モニターの正しい設定と配置、および配送前に貨物を保管するための管理機能と環境および保管に関する検討などがあります。これらはすべて、メーカーの目標に沿ったソリューションを検討する上で必須の要素です。また、信頼できるパートナーがいることは、ピックアップ(製品の積み込み)および配送(荷卸し、製品の保管)時に大きくものをいいます。

規制環境とその他の世界的懸念

温度管理された輸送に対するGDP(Good Distribution Practice)の影響は大きくなるばかりです。手短に言えば、GDPでは、サプライチェーン全体にわたる温度管理を強調しています。これは、温度管理なしの輸送が許されないことを意味します。特に製薬業界に関係するGDPは、品質管理システム(QMS)およびドキュメント、人員およびトレーニング、リスク管理(SOPを含む)、施設/保管、輸送などに対処するための基準です。規制要件の増加により、メーカーのサプライチェーン部門内の品質管理部の影響力は強くなりつつあります。このことは、規制コンプライアンスの複雑さも相まって、メーカー側の関係者がサプライヤおよび輸送パートナーが、適用規制を順守していることを確認し、リスクに基づくアプローチを採用して監査および品質協定を遂行しなければならないことを意味します。

また、メーカーが新興市場において臨床試験を実施する場合に考慮しなければならないヨーロッパ本土の規制や国別の規制もあります。南米20か国にはそれぞれ独自の輸出入規制があります。一方、メキシコでは臨床試験申請の急増により、手続きの遅延や未処理といった問題が出ています。また、ブラジルでは、臨床試験認可に数か月がかかるという問題に加え、輸入許可手続きが複雑化しています。

中国では、税関検査のために温度管理された保管室から取り出さなければならないことを見越してパッケージを選択しなければならないため、具体的な温度管理の課題が生じています。シンガポールでは、サプライ品の簡単な保管に関する正しい知識がないと規制や課税要件をクリアすることは困難です。これらの問題はいずれも、各国の規制がメーカーにとっていかに障害になる可能性があるかを垣間見せてくれます。

政治的な混乱から世界的な懸念まで、現実に、配送パターンおよびロジスティクス戦略に変革が生じつつあります。荷送人は、キューバ、イラン、北朝鮮、シリアとの間ではサービスを利用できず、ロシアおよびウクライナについては認可が下りない可能性があります。また、ベラルーシ、ミャンマー、コートジボアール、イラク、リビアなどの国々に対しては特定の商品や企業、人物に関する複雑な制限が課されており、グローバルな輸送戦略の舵取りは非常に困難です。さらに、エボラウイルスに対する懸念により、メーカーは、危険物証明、IATA/ADR規制および飛行制限などの問題に直面しています。メーカーには、ロジスティクスに影響を及ぼす政治問題に関する専門家を抱えなければならないという課題も突きつけられています。

安心のためのパートナー

規制コンプライアンスは、必ずしも、メーカーのコアコンピテンシーである必要はありません。最も信頼できるロジスティクスパートナーには、市場に関する知識、規制に関する知識、製品プロファイルに基づいてカスタマイズしたコールドチェーンロジスティクスを実施した経験が必要とされます。GDPコンプライアンス、顧客中心のSOPから現地リソースおよび関係者まで、グローバルな臨床試験プロセスを迅速に進めることのできるノウハウを持つプロバイダーとのパートナーシップによって、製品の品質および完全性を保証し、リスクを最小化し、効率を改善し、サプライチェーンを最適化することができます。実績を上げるには、これまでの事象から重要な学びを得て、新たな危機に直面した際にはこの知識を迅速に活用し、シームレスなサプライチェーンを維持できるかどうかにかかっています。

カスタマイズが最も大きな影響を及ぼす分野とは

市場のダイナミクス、イノベーション、グローバル環境における変化により、メーカーが専門輸送の新たな複雑さに直面することは確実です。また、温度管理におけるファクターの考慮は意思決定をさらに複雑化しています。コールドチェーンロジスティクスに対する投資は増えていますが、その理由は、この投資には確実に価値があるという点です。温度管理された輸送のためのカスタムソリューションを展開するには、パッケージングソリューションに対する協議的アプローチ、その市場の顧客に関する知識、人間的な触れ合いのできる現地人材のほか、規制に関する知識が不可欠です。専門ロジスティクスパートナーを臨床試験プランニングの早期に関与させることも、コストパフォーマンスに優れた結果を生み出します。製品ニーズや供給ニーズに合わせたソリューションがあれば、メーカーにとり、パッケージングシナリオを見直す可能性は低くなるからです。結局、適切な温度管理ソリューションを見つけることが、適切な商品を適切な患者に適切な時間に提供することにつながります。その結果、医薬品は進化し、研究開発への投資回収が見込まれるのです。

脚注

iMS Health, The Global Use of Medicines:Outlook Through 2016. July 2012. Available online at http://www.imshealth.com/deployedfiles/ims/Global/Content/Insights/IMS%20Institute%20 for%20Healthcare%20Informatics/Global%20Use%20of%20Meds%202011/Medicines_Outlook_ Through_2016_Report.pdf.アクセス日 - 2014年11月7日。

iiLipowicz, M and Basta, N. 2014 Biopharma cold chain forecast. Pharmaceutical Commerce. 29 April 2014. Available online at http://www.pharmaceuticalcommerce.com/index.php?pg=supply_chain_logistics&articleid=27206&keyword=biopharma-cold%20chain-logistics-forecast.アクセス日 - 2014年10月30日。

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